藁の上の回復 2016 2 28

 私は、2008年9月21日に、
「The Trillion Dollar Meltdown by Charles R. Morris」という本を紹介しました。
 この本によれば、2008年当時、
「金融資産の総額が、世界GDPの4倍を超え、
金融派生商品の総額が、世界GDPの10倍を超えている」というのです。
 この時は、超バブル(スーパー・バブル)の崩壊があり得ると書きました。
つまり、デリバティブ・バブルの崩壊のことです。
 2008年当時、不動産バブルの崩壊が、
サブプライム危機(普通のバブル崩壊)を招いたとするならば、
信用バブルの崩壊が、超バブル(スーパー・バブル)崩壊を起こすだろうと書きました。
 しかしながら、デリバティブ・バブルが作った巨大空洞の上に、
藁をかぶせて、景気回復を演出してきました。
 このような巨大空洞をいつまで保つことができるかわかりませんが、
それでも、アメリカは生き延びるでしょう。
しかし、欧州は厳しいものがあると言わざるを得ません。
(参考)
 「The Trillion Dollar Meltdown」という本は、
日本経済新聞社から日本語版が出版されています。 

パラドックス 2016 2 28

書名 膨張する金融資産のパラドックス
著者 吉田 繁治  ビジネス社

 早速、この本から気になるところを引用しましょう。
以下は、引用です。
「欧米の金融機関の巨大損には蓋がされている」
 2015年現在もなお、デリバティブについては、
保有している間は、時価評価の必要がないという特例が続いています。
 米国と欧州の金融機関では、
持ち手が計算した理論値が計上され続けています。
 本当の損失が、いくらだったのか。
世界の誰も知りません。
 政府機関が銀行に対して行うストレステストでも、
当局の意図で見過ごされています。
(引用、以上)
 それでも、アメリカは、
リークすることが文化のような国ですから、
ある程度、「透明性」があります。
問題は、往々にして、秘密主義と言われる欧州です。
 それしても、いつも思うことは、
GDPに対して大きくなりすぎた金融資産です。
その金融資産が、また金融危機を引き起こすでしょう。
 世界は、金融に依存しすぎているのです。
金融資産は、GDPに対して、何倍が適正なのか、わかりません。
 しかしながら、私は、
リーマン・ショックの前後に警鐘を鳴らしました。
もはや、金融資産の数字は、天文学で使うような数字になってしまった。
あまりにも実体経済から離れすぎていると。
 もちろん、このような批判は、
金融機関だけでなく、各国の中央銀行にも該当するでしょう。
 金本位制がない現代においては、
いくらでも紙幣を印刷できます。
いや、電子化された現代では、印刷する手間もありません。
無尽蔵に増えた紙幣が引き起こす未来は、どうなっているのか。
 それでも、インフレは起こらないでしょう。
世界的に高度に発達した物流システムによって、物資の不足は起こらないからです。
 インフレは起こらないが、金融危機は繰り返される。
それとも、「見たいところは見て、見たくないところは見ない」という「金融ファンタジー」の世界に浸るのか。
 「藁の上の回復」は、いつまで続くのか。
デリバティブや不良債権が作った空洞の上に藁をかぶせても、風が吹けば、どうなるのか。





















































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